沖田と藤堂は同時にハッと息を呑んだ。

目の前のものに信じがたいといった表情を向ける。


無理もない。


二人の視線を釘付けにしているのは、生気の抜けた女子(おなご)。

見たこともない珍妙な着物を身に着け、女子だというのに白く折れそうな脚を曝け出しているその姿はなんとも奇妙だ。


――そう。


この女子が先程二人が見つけた“人らしきもの”の正体だった。


「夷人でしょうか…このような着物は見たことがありません」


沖田は困惑した表情を見せた。


「でも…顔と髪は日本人みたいだよ?」


屈んで横たわる女子を窺い見た藤堂は、流れるように長い黒髪と顔の造りからそう判断する。


「息……もあるね」


女子の口元に手を翳し、微弱ながらも呼吸をしていることを確認した藤堂はどうする?っといった視線を沖田に投げた。

そんな視線を受け、沖田は肩を竦めた。


「放って置けないでしょう。 こんな雨の中に置き去りにしては死んでしまいます」

「決まりだね」


ニヤリと怪しさを含む微笑を浮かべた藤堂は立ち上がると沖田をぽんっと軽く叩き、頑張れ総司と嬉々として言った。


「え? ま、まさか!? 私が運ぶんですか!?」

「当り前じゃん! 先に見つけた人がやらないと。 俺とその子じゃあんまり背丈変わらなそうだし総司のほうが適してるよ」

「でもですねっ…その、なんと言うか、こんなに脚を見せた女子に触れるのは…その…」


まるで下半身だけ裸も同然の女子を自ら運ぶとは気恥ずかしい。


そういったことに免疫の少ない沖田はうっすらと紅く染まった頬を誤魔化すようにゴニョゴニョと言葉を紡いだ。

が、それに対して藤堂はそそくさとその場から離れていく。 有無を言わせずあっという間に藤堂の姿は小さくなってしまった。


この場に女子を置いていくことも出来ない沖田は、挙動不審気味に視線をさ迷わせる。



――そして意を決した。

おずおずと女子の膝裏と背中に手を掛け、沖田は壊れ物を扱うように持ち上げた。