東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


「それでロムは一刀両断バッサリ斬殺されて、屋上で“アジの開き”みたいに日干しになろうとしてるワケだ」

「“日干し”じゃなくて、化石だって」

「どっちでもいいよ」

…と、飛び起きるあたし。

「それより、せっかく今日まで勉強も恋もがんばってきたのに、そんなに簡単に終わらせてしまっていいの? ねぇ!」

「もぅ、疲れたよ…」

ゴロリとあたしに背を向けて寝返りをうつ彼。

そんな彼の横にひざまずいて、両手で彼の体を大きく揺すりながら、こう叫ぶあたし。

「ねぇ、ロム! “疲れた”なんてセリフは、ロムの頭がハゲあがって、メタボでおなかポッコリになってから、いくらでも言って! 今はまだ、そのときじゃない! 今ならまだ間に合うよ! 自分の想いを簡単に諦めたりなんかしないで!」

「うるさいな…じゃあ、どうしたらいいんだよ…」

背を向けたままの彼がテンションの低い声で言う。

「今までどおり、お菊の運転手を続ければいいのよ」

「え…?」