東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


「“恋をやめる”ってどーいうこと?」

あたしはロムがキクチ・ヨーコにフラれたのを知っている。

それなのに、知っているのに知らんぷりで訊いた。

「俺さ、クリスに言われたように、死ぬ気でお菊ちゃんにコクったんだけどさ…」

「えっ? 彼女、なんて?」

われながら、しらじらしい訊き方だった。

「“受験勉強が忙しいから、今は恋なんてしてるヒマはない”って一刀両断バッサリやられたよ」

いかにも、あのオンナが言いそうなことだと思いながら、仰向けのまま、チラリとロムのほうを見ると、ヤケにすっきりしたような顔をしていた。


そのとき、あたしはこれでよかったんだと思った。

だってロムみたいにいいコが、あんなイヤなオンナと付き合って幸せになれるとは思わないし、むしろ「よかったね♪」って声をかけてあげたいくらいだった。

だけど……、

だけど、そう思う一方で、たとえ相手がどんなだろうと、ロムの恋をなんとか実らせてあげたかったと思うあたしもいた。