東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~




不意に誰かが会話に割り込んできた。

「お菊ちゃん…」

「お、お菊…ちゃん!?」

声のしたほうを見ると、そこには黒いマフラーに黒手袋、黒ストッキングという全身黒づくめで、帰り支度を整えた菊池要子がいた。

黒づくめのファッションとは対照的に色白で、顔のパーツのバランスがよくて、美人といえば美人なんだけど、ちょっと独特な雰囲気がある。

小学生の頃から変わらないオカッパ頭っぽい黒髪、それに白くて長い首というそのルックスから一部の男子は彼女のことを“クレオパトラ”と呼んでいたみたい。

そんなキクチ・ヨーコのことを最初に「お菊」と呼んだのは、なにを隠そうこのあたしだ。もちろん親しみを込めて言ったんだよ。

お菊っていうのは、お菊人形の“お菊”。

だって彼女、“お人形さん”みたいだったし。

ホラ、着物姿の古い日本人形で、1年間に何センチとか髪の毛が伸びるみたいな“いわく”つきのお人形さんってあるじゃん? あーいうイメージだったから。

17歳になって、その妖艶な美しさはますます際立ったってゆーか、美人すぎて夜中にふたりきりでいると怖いような気さえする。