東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


「まさか“しあさって”も塾なんて言うんじゃないよね?」

あたしが訊くと、申し訳なさそうな笑顔を見せてうなずく彼。

「Oh,my God…(オーマイガー…)」


怒るというより、あたしはなんか淋しくなってしまった。

小学生の頃は「エライ考古学者になって新種の化石に自分の名前を付けるんだ」なんて、目をキラキラさせながら自分の夢を語っていたロムが、今はどこにでもいるような、つまんない男になってしまった。

それがあたしには淋しかったんだ。


「じゃ、じゃあ、俺、行くからっ…」

よほど急いでいるのか、雑な感じにカバンにテキストを詰め込むと、立ち上がって乱暴な感じで椅子を机の下に突っ込む彼。

「じゃ、せめて学校の外に出るまで、いっしょに行こうよ♪」

「いや、それは……」

そこまで言って黙りこむ彼。



「フルウチくん、あたし、ちょっと職員室に寄ってくから、先に行って自転車、校門の前に回しといてよ」