東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


「7年ぶりで会ったあたしのことを、まだ……“友達”だって言ってくれたアイを、自分の代わりにいじめ地獄に突き落としても……そんなことで天国になんて行けやしなかった……」

「もういいよ…」

彼女の涙声を聞いているのが辛かった。

「それどころか地獄から抜け出して自由になったはずなのに……それなのに……それなのに、地獄に落ちたアイのことを思うと……自分がいじめられてた頃より、もっと辛い気持ちなって……それで……それで……」

「もういいよ、分かったから、それ以上なにも言わなくていいから」

「アイ…」

「ユーは、あたしを裏切ってなかった」

「………」

「だから…だから、ユーは今でもずっと友達のままだから…アイ&ユー・コンビはちゃんと健在だから……だから、もう泣かないで」

だけど「泣かないで」と言った瞬間、電話の向こうのユーが、わんわん泣き出した。

「ねぇ、ユー、そんなに泣かないでよ……そんなに泣いたら、あたしまで泣きたくなっちゃうじゃん……」


…と、そこに何もいわずに、スッと自分のハンカチを差し出す巧。