東京エトランゼ～通りすがりの恋物語～

「ありがとう…ユー」

「そ、そんなこと……あたし、アイに“ありがとう”なんて言われる資格ないよ……」

「でも真実を……本当のこと、教えてくれて嬉しかった」


「あたしも嬉しかった……」


「え…？」

「もうアメリカに行ったきりだと思ってたのに、７年ぶりでアイが日本に帰ってきてくれて本当に嬉しかったし、それに…」

ここまで言って言葉を詰まらせる彼女。

電話じゃ、彼女の姿が見えないから分からないけど、感極まっているような感じだった。

「みんな……小学生の頃からの幼なじみのみんなでさえ、いじめられてるあたしとは距離を置いていたのに……アイだけが……アイだけが７年前とまったく同じように接してくれたから……あたし、すごく嬉しかったんだ……」

「ユー…」

そんなふうに思ってくれてたんだ。

「一度はいじめから抜け出したくて……それで、キクチ・ヨーコの甘い誘惑に飛びついちゃったけど……でも、アイをがんじがらめの奴隷みたいにしようとしているあのオンナを見て、あたし……あたし、すごく後悔したんだ……」

電話を通しても涙声なのがハッキリ分かる。