東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

そう言って彼にウインクすると、あたしは先生の後に続いて教室の前に行った。


「今日から、このクラスでみんなといっしょに勉強することになった“栗栖 愛”だ。栗栖は小学4年のときから7年間、父親の仕事の関係でアメリカで生活していた“帰国子女”だ。日本での生活にいろいろ戸惑うこともあるだろう。みんななかよくしてやってくれ」

黒板にデカデカと名前を書かれ、みんなの前に立たされて視線の集中砲火を浴びせられているあたし。

…ったく恥ずかしいったらありゃしないっ。

あたし、なんか悪いこと、した?

ひょっとしてコレはさっき先生に言い返したことへの“報復”ってコト?

いずれにしてもジャパニーズ武士道の帯刀先生と帰国子女のあたしは、どうやらウマが合わないみたいだ。

でも“Never mind!(ネバーマイ!)”と胸の中で自分に言い聞かせた。

日本ではよく野球なんかのとき“気にするな”って意味で“Don’t mind(ドンマイ)”って言ったりするもんだけど、実際の英会話ではそーいう意味では使われない。つまり“ドンマイ”はある種の和製英語だと言えなくもないってコト。

まぁ、とにかく、あたしにはロムや幼なじみのみんながいるし、別に先生と親しくなる必要なんてないと思うし、そうするつもりもサラサラない。