東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


その点、彼はいいと思う。

今まで出会った美容師さんとは違うと思った。

今はアシスタントだけど、いつかカットをやらせてもらえるようになったらゼッタイ指名したいと思うくらい。

彼は、あたしにとってオンリー・ワンでナンバー・ワンの美容師さん……いや、美容師アシスタントくんだ。


もし、今度…、

今度、あたしがこの美容院に来たとして、そのときあなたは、あたしのことを覚えていてくれるのかな?


あたしがあなたに会えるのは何ヶ月かのあいだにたったの1回だけ。

1年にたった1回だけ、七夕にしか会えない乙姫ちゃんと彦星くんよりは幸せなのかもしれないけど……、

あなたにとってあたしは毎日お店にやってくる大勢のお客さんの中の一人にすぎないのかもしれないけど……。

でも、あたしにとって、あなたは世の中に星の数ほどいる美容師さんの中で、たった一人だけ、あたしの髪を触ってもいい美容師さんなんです。

あなたにとってあたしは大勢の中の一人なのかもしれなけど、あたしにとってあなたはかけがいのないトクベツな人なんです……。