「校則……」

その言葉を聞いた瞬間、風紀担当・帯刀先生の海苔(のり)を貼り付けたようなぶっとい眉毛が目に浮かんできた。


「どーせ、もう学校行く気ないし、別に校則違反のヘアースタイルでもいいよ」

「ダメダメ。パーマもダメだし、登校拒否もダメだ」

「え~っ…」

オトナの人にしては、なんとなくハナシが分かりそうなヒトだし、このヒトなら、もっと軽いノリでOKしてくれると思ったのに。

「カットのほうはボスが……さっきの女の人がしてくれるから。あのヒト、クチは悪いけど、カットの技術は天才的だし、あのヒトならカッコイイのに校則違反にならないヘアースタイルに仕上げてくれると思う」

「天才って……カリスマ美容師ってコト?」

「あぁ」

カリスマ美容師と呼ばれるヒトなら、雑誌やなんかで何人か顔を見たことがあるけど、あの女のヒトの顔は見た記憶がない。

失礼だけど、そんなに繁盛しているようにも見えないし、こんなお店にそんなカリスマ美容師がいるとは信じられなかった。

だけど10数分後、彼がウソつきじゃなかったことをあたしは知ることになった―――