東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


「朝から元気ね」

チラリとあたしをいちべつすると、何事もなかったように問題集に目を移すあのオンナ。

ニッポンの古典的表現でいうところの“のれんに腕押し、ぬかにクギ、柳に風”状態の彼女とは、まともにぶつかりあってケンカすることさえできない。

発散できない怒りのエネルギーを全部クチのほうに持ってきて、思いっきり唇を噛み締めると、あたしは自分の席に着席した。


アッチがその気なら、あたしだってまともに相手をするのはよそう。エネルギーのムダ使いはeco(エコ)じゃないし。

“ヒトの噂も75日”っていうけど、今はじっと嵐が過ぎ去るのを待つしかないんだと、長期戦の覚悟を決めたあたし―――――



      ×      ×      ×



だけど嵐は学校を出て、家に帰ってからも吹き続けた。

ピロピロリ~ン♪

まず部屋に帰ってきて、制服から私服に着替えているとき、ケータイに1通のメールが届いた。