“1年”という時間の長さについての感じ方は人それぞれだと思うけど、10代のヒトにとっての1年は、ものすごく大きいと思う。
日本を離れ、ニューヨークで過ごした7年間。本当にいろんなことがあった。
まず名前のこと。
外資系商社に勤めるパパはいつか海外転勤があることを見越して、世界中どこでも通用する名前ってことで“愛”にしたらしいんだけど、そうそううまくいくもんじゃない。
英語で“自分”のことを“I(アイ)”っていうから、自己紹介のとき自分の名前が“アイ”だと教えれば、外国人にも簡単に覚えてもらえると思ったその発想はまちがってない。
けど会話してるとき相手に、名前の“愛” と言ってるのか? それとも、自分っていう意味で“I(アイ)”と言ってるのか? 紛らわしいって言われたことが何度かあった。
逆に“ヨーコ”や“ヒロコ”みたいな、ごくありふれたニッポン的な名前のほうが外国人にはウケてて、悔しい思いをしたこともある。
まぁ、そんなのは極私的な些細な出来事だとしても、あと、身の危険を感じるほどの本当に怖かった思い出もある。
ハーレム近くの地下鉄で黒人の子どもに、おサイフごとバッグをひったくられたこともあるし、ハロウィンのとき行った家のおじさんがたまたま子供嫌いで、ライフル銃片手に追っかけ回されたこととかもあったりする。


