東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

NY発・東京行きの直行便。それはあたしにとってディズニーランドの乗り物以上にドキドキと胸踊らせる史上最強のアトラクションだった。

ディズニーランドのは同じところをグルグル回るだけだけど、はやる気持ちをあと何時間かガマンしてさえいれば、飛行機は確実にあたしを日本へ連れていってくれるからだ。


あたし――こと、栗栖 愛(クリス・アイ)は小学4年生のとき、つまり7年前、外資系商社に勤務する父の仕事の関係で、家族3人そろってNYに行くことになった。

でも、あたしの中でのNYは、日常茶飯事的にそこいらじゅうで犯罪が起こっていて、町中をパトカーがけたたましくサイレンを鳴らして走り回っているような最悪の治安の町というイメージしかなくて、行くのが怖くて、本当にイヤでしかたがなかった。

でも、それにもましてイヤだったのは、ロムや友達と離れ離れにならなければならないことだった。

「あたし、ひとりでニッポンに残るから、パパたちだけアメリカに行けばいーじゃんっ!」

…って泣いて親を困らせたりもしたけど、最終的には親の権限(横暴!?)でいっしょに行かされることになっちゃって、NYでは毎日、神さまに“早くニッポンに帰れますように…”ってお祈りしていたもんだ。


そして時は流れた……。