「いないって?」


「わからない・・・
亜恋ちゃん覚えてるか?
彼が、亡くなったから
毎年お参りに行ってるんだ。
彼の両親とも
四季は仲良かったから
実家に帰って結婚するって
挨拶しに来たって…」


「実家ってどこ?」


「知らない…
ただ会話の中で実家は
田舎で食堂をしてるって
言ってただけ…
結婚するかもって
聞いていたから……
今頃もう幸せにやってるさ。」


俺はずっとそう願っている


  幸せに・・・って



「………運命か……」



奈楠のつぶやきが耳に入った。



「芳樹は何もわかってない。」



「奈楠…顔見せて……」



「会うつもりはなかったの。
もうきっと二度と会うなんて
思ってなかったから……
もうきっと人生も長くないって
わかってたから
流れに逆らわずに
されるがままに生きてきた。」


「苦労しただろ?」



「また会えるなら……
もっと自分を大事にしたらよかった。」



奈楠のしゃくりあげる声が
病室に響き渡る……