「…つらいな~
つらかったんだ、歩来も……」


「つらかったよ。
きっと素良も……
幸せになってね。」




そうか

俺が四季を思う
罪悪感と心の痛みは


二人とも同じだったんだ。




「幸せになるって
簡単なことじゃないんだよな。
四季の涙が忘れられない。
俺はさ、四季も愛してたんだ……
確かに奈楠の病気がなかったら
奈楠への気持ちにはきづかなかった。
それがいいことか
わるいことか……
今はよかったんだと思う。
四季はお前に似てたんだ。」



「私に?」


「うん。まだまだ未練があったのか。
おまえを四季に置き換えてた。
最初はな。
でも四季とふれあう度
四季の魅力にとりつかれた……
ほんとはまだ
まだこれでよかった
これが正解だとは言えない。
四季をあんなに泣かせて
何度このまま抱きしめていようか
そう思ったけど・・・・・・」


「でも、手を離した・・・?」



「うん。」



「だったら芳樹は
奈楠ちゃんを選んだんだよ。
四季さんだってわかってる。
あなたが苦しんでいること。
だから黙って去って行ったのよ。」


四季はそのあと
引っ越したと
聞いた。



「もう奈楠ちゃんを
抱きしめるだけよ。
それが正解だと信じよう。」


俺は不覚にも声をあげて泣いた。