でも…先生…
今も心にいるのは先生です。

私のために
きっと兄は先生と
悲しい別れをしたのでしょう。

きっと私が病気にならなかったら
兄の心は正直に
先生を愛していたんだと
思います。



私はここを離れます。
先生……
また兄を愛してくれますか?


兄の思い出だけで
私は幸せです。


偽善者……
違う……?
兄を愛しています。



兄を解放するのが
私の愛だと思うのです。


罪悪感で兄はきっと
私を探すでしょう。


先生……
兄が築けなかった
温かい家庭を
一緒に築いてあげてください。


もう兄に会うことは
ありません。


兄にはこの手紙のこと
言わないでください。



たとえ命の期限が
長かったとしても……



兄の人生の道を
二度と誤らせたくはないから



どうか
どうか……


悔いのない人生を
兄と一緒に
歩いてあげてください。



     林  奈楠