「何か?」


「いえ、僕は中村さんとは
病院でお会いしたので
病気の前はこういう方だったんですね。」


「いい写真でしょう?
亜恋ちゃんが選んでくれたの。
さぁ、座ってください。」



手を合わせて
遺影を見上げた。



俺は、中村の顔を見ると
自然に涙があふれた。
詳しいことはわからないが
波乱に満ちた人生だと
奈楠が教えてくれた。
最後に見た中村の
やつれた笑顔とこの遺影の笑顔は
全く別人だったから・・・・



「すいません。
なんか・・・すいません・・・。」


俺は今頃来て
泣いている自分が
申し訳なくて仕方なかった。



「ありがとうございます。」
母親も目頭を抑えた。



「いい写真ですね。
亜恋ちゃんは、彼の一番いい顔を
よく知っているんですね。
自分は、最近こういう笑顔で
笑ってないなと思います。
こうして会えて嬉しかったです。」



「また思い出したら
いつでも連絡ください。
さ、コーヒーどうぞ。」



コーヒーを飲んでいると
チャイムが鳴った。


「あら?ちょっと
待っててくださいね。」


母親が玄関で


「あら~!!四季ちゃん~」
と声を出した。