奈楠の消息はつかめなかった。

あれから
何度冬が俺の前を
過ぎて行っただろう。



奈楠が帰ってこられるように
この部屋に住み続けていたが



新店舗立ち上げの
管理職候補として
この地を
離れることになった。



 奈楠が帰ってきたとき
 俺がいなかったら
 どう思うだろう・・・


それが俺は心配だった。



あいつの帰るところは
俺のところしかないから




部屋も荷物も
奈楠の出て行ったあの頃と
変わらなかった。





転勤先の住居に
持っていくことができないから
すべてここで処分して
いかなければいけなくなった。



ここだけ手がつけられず
先延ばししていた。