「う・・・・・」


「どうしたの?
歩来さん・・・・!?
歩来さん!!」


俺はあわてて立ち上がった。


看護師が入ってきた。
ナースコールを押したようだった。


俺が入ろうとしたら
「だめだめ・・・男の人
今だめです~」


いつもの看護師が笑った。


「何かあったんですか?」


「破水したの、お産始まります。
ご主人に連絡とって。」


俺はあわてて携帯をとった。


「大丈夫?歩来さん!?」


苦しそうな声で
歩来が言った。


「奈楠ちゃん・・・
私のそばにいてくれる?
芳樹!!」


カーテンの向こう側から
歩来が叫んだ。


「素良には連絡しないで。
大事な会議なの。
迎えにくるまで・・・・
大丈夫、奈楠ちゃんにお願いしたから・・・
看護師さんに・・・
言っておいて・・・うっ・・・」



「歩来さん・・・」


「見てて。
愛する人の子供を・・・
誕生させるから・・・・
奈楠ちゃんに・・・
この神聖な時を・・・・
見てもらいたい・・・・
あなたの・・・
命と同じ・・・・
女が・・・おかあさんが・・・
どんなに苦しんで
堪えて・・・・
命を誕生させるか・・・・」



歩来は生命の偉大さを
奈楠に身をもって
教えてくれようとしていた。