「奈楠、安心していいから。」

「なにが?」


「なんのための兄だ?
もっと頼ればいいんだ。」
わざとにおどけていった。


「兄って・・・・・
血もつながってないんだから
私に縛られることはないわ。
にーにーは自分の人生だけを
生きるべきだよ。」


「そんなこというな。
おまえは俺の妹だ。」


「だから妹じゃないんだって。
私は一人で生きていくの。
大丈夫だから。
もうほっといて。」


「そんな悲しいこというなよ。
俺とおまえは孤独だったんだ。
俺はおまえに出会った2年間
すごく幸せだったんだ。
忘れられない。
家族の思い出だから・・・」


「もうあの頃じゃないよ。
私は 佐川 芳樹 っていう人間を
兄だなんて思ってない。」


「奈楠・・・・」



「だから私のことはもう
忘れていいから。」



奈楠は背中を向けて
布団を頭からかぶった。


「奈楠・・・・そんなこというな」
悲しくて涙が出てきた。


「俺が悪いんだ・・・
本当にごめん・・・」


「悪くない!!
だからいいって!!
帰って!!」

盛り上がった布団が揺れた。