翌日は土曜日だった。

俺はリコ姉ちゃんから借りた小さな紙袋を持って、石楠花先生のマンションの前にいた。

紙袋には、彼女からもらったハンカチが入っている。

ハンカチはちゃんとアイロンをかけて新品同様になっていた。

ここにきて5分くらいが経過したけど…何をしているだよ、俺は。

何を思って待ち伏せみたいなことしてるんだ。

こんなところでうろちょろしてたら、近所のヤツらにストーカーとして通報されるぞ。

そんなことを心の中で自問自答を繰り返していたら、
「松田くん?」

声をかけられたので視線を向けると、石楠花先生だった。

「あっ…えっと、こんにちは」

顔見知りのはずなのに何で戸惑ったんだ!?

情けなさ過ぎて、何も言えねえ…。

「どうしたの?」

石楠花先生にこれ以上何かを言われるのが怖くて、俺は紙袋を彼女の前に突き出した。