肩を並べて歩いていたら、
「ごめんなさいね、ごちそうになっちゃって」

先に石楠花先生が話しかけた。

「あー、別にいいっすよ」

それに対して、俺は返事をした。

「鉄板焼き、とても美味しかったです」

石楠花先生が笑った。

その笑顔に、俺の心臓がドキッ…と鳴った。

何だ、今の効果音は。

「じゃあ、そろそろこの辺で」

十字路で石楠花先生が立ち止まった。

「はい、じゃあ…」

そう言った俺に、
「鉄板焼き美味しかったです、さようなら」

石楠先生が俺の前から立ち去った。

「さようなら」

俺は彼女の背中が見えなくなるまで、その場に立っていた。

その背中に何で寂しく感じているのか、俺自身もよくわからなかった。