「杉浦の」

「杉里な」

「…もし負けたら、俺は本当にリコをにあきらめるよ」

呟くように言ったアズにぃに、俺は黙った。

「杉下に」

「杉里」

わざと杉里さんの名前を間違えてるのかどうかよくわからないが、いい加減に覚えろと言う話である。

そのたびに訂正する俺の身にもなってくれ。

「あいつにリコを譲る。

あいつだったら、きっとリコを幸せにしてくれると思う」

そう言うと、アズにぃは真っ黒な夜空を見あげた。

本当に、そう思ってるの?

そんなアズにぃに、俺は思った。

負けたら本当にリコ姉ちゃんをあきらめるの?

ずっと片思いしていた人を、簡単にあきらめれるの?

俺がアズにぃの立場だったら、そんなのできない。

簡単にあきらめるなんて、そんなの無理だ。