その日の夜のことだった。

「大丈夫なの?」

そう言った俺に、
「勝負するしかねーだろ」

アズにぃが言い返した。

アズにぃは今朝、杉里さんの宣戦布告を受けた。

対決は明日の昼で、内容はリコ姉ちゃんの大好物である桜餅を作ると言うことである。

リコ姉ちゃんがアズにぃと杉里さんが作った桜餅を試食して、どっちが美味しいかと決めるのだ。

どっちかが負けたら、リコ姉ちゃんをあきらめると言う条件つきである。

「けどさ」

俺はそこまで言いかけたけどやめた。

「何?」

そう聞いたアズにぃに、俺は何でもないと言うように首を横に振った。

アズにぃは息を吐くと、
「俺のせいで、これ以上あいつを泣かせたくないんだ」
と、言った。