つま先立ちの恋

私がぼんやりとパペちゃんのことを考えていると、

「でも、上履きとジャージはなかったね」

「そういえば…」

葵ちゃんに言われて気付く。確かに上履きもジャージもまだ見つかってない。そっちこそ焼却炉に捨てられていてもおかしくないのに。

…て思うのも変だな。

ポリポリ。こめかみを指でかく。

『それに、わざわざ焼却炉っていうのも気になるしね』

「どういう意味?」

『もっと見つかりやすい所に捨てた方がわかりやすいでしょ』

「何が?」

『灯歌ちゃんがターゲットだってことだよ』

「ターゲットって…」

『少なくとも、誰かの感情のハケ口になってるってこと』

パペちゃんが自分の口の前に牛くんのパペット人形をあてながら、言った。

『自覚しなきゃ』

まっすぐと私を見つめる物言わぬその目に、寒気がした。