つま先立ちの恋

私がパペちゃんと知り合った時、パペちゃんの手にはもうパペット人形があった。

直接本人から聞いたわけじゃないから詳しいことは知らないけれど、クラスメイトが話していた話によれば、パペちゃんは小学生の時にイジメを受けていて、それがキッカケで自分で言葉を発することをしなくなったらしい。

学校の先生も事情を察しているらしくて、授業中とかも絶対パペちゃんを指名したりしないし、パペット人形についても何も言わない。

パペちゃんは中等部からの編入組だったから、入学してきた時にはやっぱりそのパペット人形は目立ったし、それが好奇の的になったこともある。

だけど、パペちゃんは気にしなかった。

ただ、………―


『パペットって呼んで。その名前、嫌いなの』


パペちゃんの下の名前の読み方を聞いた時、パペちゃんはそう言った。あれが私とパペちゃんの最初の会話。