つま先立ちの恋

ヒカルちゃんは校舎裏に歩いて行っただけで、私はそれをたまたま見かけただけ。そしてそこに焼却炉があっただけの話だ。

私はヒカルちゃんが直接焼却炉にこれを入れた瞬間を見たわけじゃない。たまたま追いかけて行ったら、たまたま焼却炉の中に私の教科書が入っていたのを見つけた。ただそれだけだ。

だけど、

「…疑う気持ちがないとも、言いきれないけど」


“ヒカルちゃんがやったのかもしれない”?


それも正直なところだった。

これだけ状況証拠を並べられると考えてしまう可能性。そう思いたくないのに、私の中で生まれた黒い感情は拭えなかった。だって、私はそんなに出来た人間じゃないもん。

すると、パペちゃんが言った。

『それが人間でしょ』

いつも無表情のパペちゃん。

『それと、こういうことする奴らも同じ人間なんだよ』

瞼を軽く伏せた表情で、悪意にまみれたそれを見下ろす。


···そうだった。


パペちゃんは私よりも、そういう「奴ら」を知っているんだった。