つま先立ちの恋

わざと芝居口調でふざけていた私は改めてそれと向かい合い、ため息をつく。現実逃避もここまでだな。てか、限界だよ。怒りでさ。

「てかさ、本当にあるんだね、こういうのって。バッカみたい」

葵ちゃんの手から教科書を取り上げて言う。

「こんなのに貴重な時間費やしてさ。こんなことしてる時間があったら部活するなり恋するなり、もっと青春しろよって感じ」

「灯歌ちゃん、問題はそこじゃ…」

「だってそうじゃん。こんなことして何か変わる?私、こういうことする人間、大っ嫌い」

気持ちが昂ぶるあまり、私は自分の教科書だということも忘れ、それをビリビリに破ってしまいたい衝動にかられた。それを葵ちゃんが慌てて止めに入る。

そんな私たちに目もくれず、黙り込んでいたパペちゃんが口を開いた。

『で、灯歌ちゃんはどう思ってるの?』

その一言に、ピタリと体が固まる私。心配そうに葵ちゃんが見守っている。

私はぎゅっと拳を握りしめた。

「…ちょっと都合がよすぎるんじゃないかな、と思う」