「諸君、これをどう判断する?」

組み合わせた両手の甲に顎を乗せながら、私は葵ちゃんとパペちゃんに問う。

ここはいつもの秘密基地。人の気配すらないここで今、私たちが取り囲んでいる机の上には問題の教科書が置かれていた。

焼却炉から救出した教科書はやはり、間違いなく私の倫理と数学の教科書だった。だって16年間付き合ってきた私の文字で私の名前が裏に書いてあるんだもん。間違えようがないでしょ。

葵ちゃんはそのうちの倫理の教科書を手に取り、ページをめくる。

「とりあえず、見つかってよかったって言ってもいい、のかな?」

少し遠慮がちな葵ちゃんとは対照的に、パペちゃんが言う。

『見つからない方が良かったかもよ』

二人の言葉はそのまま、私の気持ちだった。

そう。ただ捨てられていただけならまだしも、救い出した教科書はもう使える状態ではなかったのだ。

何故ならば、ビリビリに破かれ、それでもかろうじて残っていたページには、子どもが何の躊躇もなく口にするような言葉がこれまた汚い字で書き殴ってあったからだった。