廊下にいる葵ちゃんとパペちゃんにジャージがないことを話すと、葵ちゃんが可愛らしく目を丸めて言った。

「灯歌ちゃん、前も同じようなこと言ってなかった?」

「へ?」

『昨日は確か、倫理の教科書がないって言ってたよ』

パペちゃんの左手にいる牛くんが私の顔の真ん前でそう言った。ちなみにカエルくんはそろそろ冬眠の準備をしているらしい。

「言われてみれば…」

腕を組んでよ~く考えてみよう。

倫理の教科書だけじゃない。数学もそうだ。ま、数学なんて大嫌いだから教科書なくなっても全然困らないんだけどさ。

「確かに…」

ふむ。これは何か妖怪のしわざ?

「座敷わらしとか?」

『座敷わらしは家に憑く妖怪だよ』

すかさず牛くんの鋭いツッコミ。更に葵ちゃんが、

「座敷わらしは幸運をもたらす妖怪だから」

と。おそらく問題はそこではないというツッコミは、このメンバーでは期待できない。