つま先立ちの恋

「………それで?」


初めて自分に向けられた短い言葉に、私は一瞬、何か別の物音か何かを聞き間違えたのかと思った。

だってフーは相変わらず私に背中を向けたままだし、慣れた手で襟を正しているだけで振り返る気配もない。

私が返事に戸惑っていると、もう一度、今度ははっきりとフーの声が聞こえた。

「俺にどうしろと?」

「えっ、、、」

「俺は一度でもお前にああしろ、こうしろと言ったつもりはない」

フーの動きに合わせて、シュッと耳をくすぐるような音が部屋に響いた。

「お前はお前の好きにすればいいだけの話だ」