つま先立ちの恋

この人、何を言いたいんだろう、、、、


それを訊こうとして開きかけていた口に気付き、私は口を閉じた。

私にだって学習機能はある。ついさっき言われたことをもう忘れて繰り返すような子どもじゃないんだから。

そんなことを考えていると、

「さて。ちょっと出かけてこようかな。冷蔵庫には食材になるような物がないからね」

明人さんはキッチンから出てくると、椅子にかけてあったスーツを手に取った。

「だけど、俺のいない間に冬彦サンが会社に行こうとするかもしれないなぁ」

親指と人差し指で顎を軽く挟み、彼は一人言のようにそこまで言うと、

「だから、俺が帰ってくるまで冬彦サンを見張っていてくれるかな」

にっこりと。

「……………、へ?」

顔を上げればそこには変わらぬ彼の微笑みだけがあった。