つま先立ちの恋

で、私が今どこに向かって歩いているかと言うと……

彼のことなら何でもお見通しなの、私。

彼はこういうウワベだけの人間関係が大の苦手。けど、さすがに1日顔を出さないわけにも行かないし、仮にも会長の孫ってことで、朝からひっきりなしに挨拶回りして疲れてるはず。

だからこういう時はね、あそこに逃げ込んでるはずなの。


そう …―、
私たちが初めて会った場所。


「見ぃつけた!」


扉をこっそり開いて中をのぞくとやっぱり、彼はそこにいた。


「フー!」