夕暮れ行進曲

 「風邪引くから坂井も早く帰れよ。」

「はい・・・」

 そうは言ったが坂井はまだ動こうとしなかった。
俺はカイロを取り出して坂井に渡した。

「え?」
 
「あげるよ。」

「だ、大丈夫ですよ~!もう家すぐそこですから。」

「知ってるよ。でも持ってって。まだ暖かいからさ。」

「先輩は?」

「俺は大丈夫だよ。うん。じゃ!またな。」

 俺は自転車をカーブさせ坂井に背を向けた。

「あの。」

 坂井が思いつめたように俺を呼び止めた。俺は首だけ後ろを向いて、坂井を見た。