「このペンダントへのお願いもあと一つだね」


満開だった桜も終わりを迎えようとしている。
この時期が一番寂しくなるのは日本人の性ってやつだろうか。

私はシャロンの魔法でこれまで身の回りに起きたピンチを切り抜けてきた。
スピード違反を捕まえるために警察官になったり、急病の人を助けるために医者になったり、またある時は人生に悩んでる人のために路上で占い師になってみたり、怪我したメンバーの代わりに草野球チームでピッチャーとかもやったなぁ。

少しでも人の役に立っているって実感がなによりも嬉しくて心地よくて、今までの日常より遥かに充実していた気がする。



でも、

何か違う。



「……今、マリリンの『本当の願い』は何?これが最後だから」

「最後……私の『本当』の願い……?」

何も取り柄のない私だけど、実は途中で諦めてしまった『夢』がある。

それは……。


「絵本作家になりたい」


私が小さい頃、魔法少女に夢中になっていたように……。
自分の作った物語で子供たちに夢や希望を与えていきたい。

一度、本気でなろうと絵本を書いていたこともあった。

けれどいつの間にか挫折してしまっていた。

もう一度頑張ってみようか。
自分にしかできないことがあるなら。


『今度は人のためでなく自分の未来のために!』


「シャロン!私、絵本作家になりたいっ!!だからっ……」
まりあは最後の花びらをもぎ取り、ぎゅっと手のひらの中に納め、
そして、
静かに両手を重ねるとゆっくりと念じた。

「了解っ!その願い我が心の内にっ!!」

シャロンの声と同時に大きな光が二人を包み込む。


「マリリンっ!今までありがとうっ!素晴らしい絵本作家になってね~」


その言葉を残し彼女は忽然と消えた。

「ありがとう……シャロン。あなたも一人前の魔女になりなさいよっ!」

まりあは花びらの無くなったペンダントを何気なく見つめた。
すると、そこには小さなダイヤが光っていた。

これは原石だった私たちがやっと一粒のダイヤとして輝き始めた証……。


そうだよね……シャロンっ!!