鬼ヶ島(おにがしま)。ここは俺が住んでる場所。

鬼ヶ島とか言う変な名前とは打って変わってきわめて平和で気候も穏やかで周りは大体海と山と道ぐらいしかないド田舎島。

都会まで行くには水上バスで約1時間半の距離でいける。ちなみに隣の金淵島に行くには水上バスで20分。金淵島はこの島とは対照的に結構都会っぽい。

警察も消防署もなくて、あえてスーパーと診療所…あと海の家があるか。
本当に何にもないつまらない島だけど、俺は別にこの島は嫌いじゃない。

ここには頼れる大人や大切な親友がいるし、この島にも探してみれば楽しいことはたくさんある。
俺は別に都会に出たいとかも思ってねえし、一生この島で生きていこう
と思ってる。
といっても、まだ俺は中学生だから、まだどうなるかはわからねえけど。

楽しいことや辛いこと、いろんなことが過ぎていって一年が経ち、
そして気が着いたらもう一年が過ぎて、俺は中2になっていた。

そして、もう七月。もうすぐ夏休みだ。

雲ひとつない朝の青空は太陽を大きく写して、蝉の鳴き声がじわじわ耳を刺激し、冷たくないけどなんとなく心地いい風がこげ茶の髪の毛と木陰を揺らす。

そんな真夏の朝。俺、安藤輝明(あんどう てるあき)は子供の頃からの待ち合わせ場所、チセの木の下で皆を待っていた。


 「テルーっ! おはよーっ!!」

すると、日向のほうからユイカが手を振って、ポニーテールを左右に揺らして手を振りながら走ってきた。

小野唯花(おの ゆいか)は俺の幼馴染。明るく元気で活発な女の子。
背中の先ぐらいまでの長さの茶色がかった髪の毛をいつもポニーテールに縛って、少し幼げな円らな目の美人(だと、周りの奴は言っている)
いわば、男子にモテてるって訳だな。でも俺は別になんとも思ってない。付き合いが長いからかな?

「ホントにテルはいつも一番最初に来るよねーっ! 今日こそは追い越してやろうと思ったのになっ。」

ユイカは元気そうな笑顔で俺に言った。ユイカはいつも元気に笑う。元気だけが取り柄って言うのはまさにユイカを表す言葉だ。

小さい頃からずっと変わってない。昔からユイカはそういう奴だ。