「これさ、俺が引っ越すときにあげたやつだよ」
「引っ越ししたんだ」
「そ。この年も一緒に桜見るって言ったのに、見れなかったから代わりにあげたの」
全然覚えてないみたいだけど。
ちょっと嫌味っぽくあの人が言う。
やっぱり、ここまできてもわからない私の記憶力って異常かも。
「それも、そのとき俺があげたんだよ」
そう言って私の胸元を指す。
ペンダントのことだろう。
「それ次会うときまで持っててって。もし、すっごく顔が変わってても解るように」
「そんな意味だったんだ」
「そ。まぁ誰かさんは、昔の写真見ても思い出せてないみたいだけど」
「ごめんね」


