二人して桜の木の根本に腰掛けた。
ドキドキはしない。
ただ、この空間がなんだか凄く好きだと思う。
「そうだ。名前聞きたかったんだ」
「名前?」
「そう。名前を聞けば思い出せるかなと思って」
いくら私が記憶力が悪いといっても名前を聞けば思い出すだろう。
「ごめん、教えられない」
「え?なんで?」
まさか、教えられないと言われるなんて思っていなかった。
だから、驚いた。
「きっと真琴は知ってるはずだから。自分で思い出して」
そんなこと言われても、わかんないものはわかんないだから。
「じゃあ、ちょっとだけヒント」
よっぽど私が解らないっていう顔をしていたんだろう。
あの人が言ってきた。
「それ」
あの人が私の胸元を指差す。
「そのペンダントがヒント」


