「あぁ。アイツなら風邪こじらせたらしくて。家で寝てる」
思い出したかのように答える圭くん。
『沙羅が風邪か…』
珍しいな。
………あれ?
『なんでそれを圭くんが知ってるの?』
「朝方電話かかってきたんだよ。苺来るように言ったのにあたしが行けなくなったから相手してあげて!って」
『沙羅ぁ〜……』
つくづくいい子だ、あの子。
「6時半にかけてきやがって!俺の睡眠を邪魔したんだ、あの女!」
『早起き、出来たんじゃん』
「二度寝の素晴らしさについて、レポート書こうか?」
『結構です』
だから寝坊ばっかすんだよ、圭くん。
「こうな、目覚まし時計をスヌーズさせておくんだよ。止めても電源切らなきゃ5分に1回、30分間鳴り続けるヤツ!計7回鳴るんだけどな、その間に起床と就寝を何度も繰り返して──…」
結構ですって言ったのに、語り始めた圭くん。
だいたい、スヌーズ機能使ったら二度寝どころじゃすまないんじゃないの?
それだけ思って、あとは適当に流す。
『裕人っ』
「ん?」
まだ語り続けてるから、気づかれないだろうと裕人を呼ぶ。
『帰り、沙羅ん家寄ろっか』
「見舞いか?」
『うんっ!果物でも差し入れして…』
「うつされんなよ、風邪」
『大丈夫っ』
「なんとかは風邪引かないって言うもんな」
『ば、バカじゃないもん!』
あ、しまった。
「苺?」
訝しげな目であたしを見る圭くん…いや、クラスのみんな。
隣で爆笑する裕人。
『あ、あは…はははっ……』
笑うことしか出来なかった。
いや、笑うことすら難しい空気だった。


