空の少女と海の少年



「──僕が……空?」

「闇が晴れると、春を視た時と同じ空が視えた。……うん。あなたは空。」


由紀が目を見ないで言うと
蓮は頭を抱えて俯いた
いきなり空だと言われて
頭の中が混乱しない訳がない

でも自分が空の能力を持っている事により
蓮の頭の中にはひとつの疑問が浮かんだ


「……僕は春の何…?」

「………。」


空の能力を持つ春は¨空の姫¨

じゃあ僕は……
春ちゃんのお兄ちゃん……?

じゃあ今までの
春ちゃんに対する気持ちは……


「シスコン……?」

「そこ!?」


由紀は思わずツッコミを入れる

蓮は顔を上げ
にこりと微笑んで
ありがとう
と由紀に言うとカフェを出て行った

残された由紀はとりあえず
コーヒーを口に運んだ


「……マスター。」

「なんですか?」

「本当の事言わない方がよかったみたい。」

「彼は自分の事を受け入れられたように見えましたが?」


蓮が出て行った扉を
見ながら言ったマスターに
由紀は俯きながら呟いた


「……あいつの心の闇、濃くなった。」


まるで今にも雨が振り出しそうな
黒く重い雲に覆われたかのように


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