だんだん近づいてくる社長に、私は一歩後退りしてしまう。
一歩、一歩、私は社長が近づくたびに足が後ろへ向かって動く。
そして後退りする私を見て、社長は小さく舌打ちをして止まった。
「・・・分かった、好きにしろ。」
「・・・?」
「あいつに近づいてもいいって言ったんだ。」
さっきとはまるで真逆の事を言う社長に私は目を丸くし、なんていうか言葉が出なくなってしまった。
そんな私においうちをかけるように、社長は言った。
「・・・泣かされたかったらな。」
泣き・・・?
どういう意味?
「・・しゃ・・・」
「俺は今から会議に出る。お前はさっさと自分の職場に戻れ。」
社長を呼ぼうとした私の声は社長の声によって消され、そのまま私を残し部屋をでていった。
何が起こったの?
というより、私は何しにここに来たんだろう。
こんな事になるなんて思わなかったし、突発的とはいえ社長に会いに来てそれで・・・。
・・・っ。
ここに入ってきた時よりも気持ちが沈んでいるのは明らかだ。
気まずく残った空気と言葉。
それらは、私の周りをぐるぐると占領してきて。
私はしばらく動く事ができなかった。

