息を切らして逃げ込んだ先は、住宅街だった。

 庭付き一戸建ての住宅が規則正しく並ぶよくある光景。しかし、ひと息つくのもつかの間、何の変哲もない住宅街と思っていた俺の前に、惨劇は文字通り降りかかってってきた。

「やめろおーっ!」

 身を切るような男の叫び声とガラスの割れる音と共に、中年男が目の前に落ちてきた。

 俺は目を見開いた。恐怖に顔を歪めた男は骨の砕ける鈍い音を響かせて、頭をアスファルトにめり込ませた。

 飛び散るガラスと血をを避けるように飛び退くと、思わず上を仰いだ。割れた二階の窓からは若者が三人、顔を覗かせて笑っていた。

 何度か見た狂気の目がそこにはあった。

(まさか、こいつらが……)