「そこの車庫にある車、持っていけ」

「あ、ありがとうございます。でもどうして……」

「人間死ぬ前にはよ、今まで悪いことしてきた事を後悔してな。最期の罪滅ぼしだ」
 罪滅ぼし……俺もそうなのだろうか?

「ありがとうございます。本当にありがとう」

「ああ、もう行け。時間は少ないぞ」

「はい!」 

 車と言っても軽トラだがスクーターよりは数段マシだ。バラバラと軽いエンジン音を上げると老人に手を振り走り出す。

(俺は罪を償いたいんじゃない……取り戻すんだ)