絶望のダイビングのなか、意識が遠ざかる。もう死にはあらがえないだろう。

(このまま終わりだ……)

 しかし耳に届く声が俺を呼び戻した。


『会いたい』


 その時、確かに聞こえた。懐かしくて愛おしい亜紀の声が、息遣いまで感じるほど近くに!

「亜紀っ!」

 恐怖が勇気に変わった。この絶望的な状況のなか、俺の魂は『生きる』道を選択した。

「亜紀っ!」

 その名前が生きる力になる。

「亜紀ぃっ!」

 その名前が生を手繰り寄せる。