閉ざされる視界。しかしそれは予期せず晴れ渡った。

(……!?)

 激しいショックに構えた体が肩すかしを食らうように、ハンドルを握る手からアスファルトの感触が消えた。

(道が……)

 不意に襲った無重力。そしてクリアになった視界の先には、続いてるはずの道が見当たらなかった。

(無い!)

 山伝いに走るこの道路には多くの陸橋が架かっている。ちょうどそこに差し掛かっていた時だったのだ。あるべき道は粉々に砕け散りながら落下してゆく。そして眼下の深い谷底は一瞬にして爆炎に包まれた。

 体中の血液が逆流しているようだ。体が感じる浮遊感とは対照的に恐怖が圧倒的重力でのしかかってきた。

(だめか……)

 隕石の衝突が巻き起こした風圧が体を突き上げ、ここまで共に傷つきながら走ってきた愛機が手から離れた。唸りを上げて膨張する炎に、赤い友が飲み込まれてゆく。

 そして真っ赤な爆炎は見る間に地上を埋め尽くし、俺を飲み込もうとするがごとく舌を伸ばした。