「俺とはえらい違いだ」

 鼻で自分を笑う。ここまで来た自分の理由を見失いそうだ。

「あなたは最期をどう過ごすつもりですか?」

 今度は俺に質問が投げかけられた。その答えに詰まるとは自分でも不思議だった。

「別れた妻に、会う……そして」

(そして? どうするんだ?)

「えっと……」

「愛してるんですね」

 言葉を探す俺に彼女は言った。

「そうだな。でもそれだけ。しかも俺だけの勝手なものかもしれない……もう、終わってるんだ」

「きっと、終わってないですよ」

 彼女は、母親に寄り添い、安堵からか寝息を立てる隆の頭を撫でながら続けた。