「なんだてめえ!」

 先に立ち上がったのは俺の方だった。すかさず起き上がりの男の顔面に渾身の蹴りを入れる。鈍い音が響き、男は首を一瞬仰け反らせたが、すぐさま両手を伸ばして食らいついてきた。

 今度は拳を叩き込む。顔面に叩き込まれた拳の脇から覗く目はそれでも俺を睨み付け、ひるむ気配すらなかった。再び組み付かれる。

(……んの野郎!)

 今度は膝を腹に見舞うと男はくの字に体を折ったが、それでも手を離すことはなかった。