「おい、略奪行為は禁止されてんだよ」

 女を略奪しようとしてたのはどこのどいつだ。

「死刑を言い渡ーす」

 心は表情に表れる。目の前の顔は俺が今まで見たなかで、もっとも醜悪な顔だった。つい今しがた仲間が銃弾に倒れたというのに、冷たい笑顔で口端を吊り上げている……。

(正気の沙汰じゃない)

 言葉を交わす間もなく引き金が躊躇なく引かれた。しかし引いたのは俺のほうだ。

 俺の手にしていた給油ノズルから勢いよくガソリンが飛び出し、自衛隊員はきつい揮発臭にまみれた。

「うわ、てめえ!」

「撃ってみろよ!」

 ガソリンにまみれた銃と体で撃てば自らも火だるまになるのは免れないだろう。ひるんだ隙にバイクに跨りエンジンをかけると、狭いスタンド内に爆音が反響した。