一人でも多くの人を……ここまで来ても心はそれしか無かった。その時、彼の目に泣き喚くひとりの幼い女の子が映った。思わず駆け寄って抱き上げ、。その子に聞いた。

「お母さんは?」

「いないーっ!」

 泣きながら母親を捜す痛々しい姿。それは彼の胸を痛ませた。

「よし、お母さんを捜そう」

 にこりと笑いかけ、少女の頭を撫でた。

 その時、微動する地面が最期の時が来たことを彼に伝えた。

 一様に逃げ惑う市民も急速に赤みを増す東の空に目をやり、その足を止める。いよいよ迫った審判の時。

 次第に大きくなってゆく大地の振動はいやがおうにも恐怖を煽りたてた。

「怖いよ!」

「大丈夫、大丈夫! お兄ちゃんがついて……」

 そこまでだった。まったくの一瞬で光に呑み込まれた彼の最期の想い。


(ついているから大丈夫……)



 そこで彼の意識は途絶えた。