割れた陶器を修繕する業者は確かにあるが、これほど割れたものを請け負ったのは初めてじゃないだろうか?

 それよりもそれを捨てずに取っておいた事が、どれほどこのカップに想いを託していたかを窺い知る事が出来た。たくさんのひび割れはあるが、それでも直せれば良い。

 辛い思い出でも直せることもあるのだと、それを眺めていま思う。

「亜紀……前に言ってた言葉の一つひとつの意味、今はすべて解る。だからこうしてここまで来れた」

「うん、わたしもマキのあの頃の気持ちがよく解るの。ごめんね……」

「いや、謝るのは俺だから」

 亜紀は驚くほど変わっていなかった。涼しげな目と端正な鼻と口元。そして眩しい笑顔。

「亜紀……愛してるよ」

「うん、愛してる」

 それから俺たちは長い間抱き合ってキスを交わした。


 あの頃の俺たちのように……



 タイムリミット――。